「酷暑とは具体的に何度を指すのか?」という疑問に対する明確な答えは、「酷暑そのものに気象庁が定めた明確な数値基準は存在しない」という事実です。
日頃メディアで耳にする気温の区分は、気象業務法に基づいて気象庁が厳密に策定した気象庁の予報用語によって規定されています。例えば、日最高気温が25℃以上なら「夏日」、30℃以上なら「真夏日」、そして35℃以上なら「猛暑日」と定義されています。しかし、この公的なリストの中に「酷暑日」という単語は見当たりません。
言葉の成り立ちを紐解くと、酷暑と猛暑の違いは制度上の歴史に由来します。もともと気象庁では「猛暑」と「酷暑」を同じ意味の日常語・一般用語として扱っていました。ところが、2000年代に入って地球温暖化とヒートアイランド現象の影響が顕著になり、最高気温35℃以上を観測する地点が急増。それまでの「真夏日(30℃以上)」だけでは危険度の高さを国民に伝えきれなくなったため、気象庁は2007年4月に「猛暑日」を正式な予報用語として新設しました。
その際、気象庁の有識者検討会では「酷暑日」にするか「猛暑日」にするかが激しく議論されました。最終的に「猛暑」のほうが報道や一般社会で広く使われていたこと、そして漢字の持つ語感が注意喚起に適しているという判断から「猛暑日」が正式採用されたという経緯があります。つまり、気象庁の公式発表では「猛暑日」が使われる一方で、新聞の見出しや文学的表現、あるいは気象キャスターの解説において、厳しさを強調する言葉として「酷暑」が現在も併用され続けているのです。