東映のニューフェイスとして芸能生活をスタートさせた若い頃の太地喜和子さんは、可憐さと芯の強さを兼ね備えたビジュアルで早くから注目を集めました。しかし、映画会社の専属システムに甘んじることなく、真の演技力を求めて名門・文学座の門を叩きます。
文学座のトップとして君臨していた大女優・杉村春子さんは、太地さんの類まれなる才能を即座に見抜きました。特にテネシー・ウィリアムズの名作戯曲『欲望という名の電車』のブランチ・デュボア役は、太地さんの代名詞となります。神経症的で、過去の栄光にすがりながら崩壊していくヒロインを、体当たりのエロティシズムと切なさで見事に演じ切りました。
演出を手がけた蜷川幸雄氏をはじめ、数々の演出家が「太地喜和子が舞台に立つだけで劇場の空気が一変した」と証言しています。舞台裏で見せる猛烈な台本読み込みと、本番で見せる奔放な煌めきのギャップこそが、観客を惹きつけてやまない魔力でした。