街にあふれる焼鳥店と専門の地鶏屋を分ける最大の境界線は、農林水産省が定める日本農林規格(JAS規格)の厳格な条件をクリアしているかどうかにあります。一般的な大衆焼鳥店で使われるブロイラー(若どり)は、効率的な生産を目的に約50日前後で出荷されます。これに対し、本物の地鶏は日本古来の在来種由来の血液百分率が50%以上であり、ふ化から80日以上の長期飼育、さらに1平方メートルあたり10羽以下の平飼い環境で運動させながら丹念に育てられます。
この飼育環境の差が、筋肉中のイノシン酸やグルタミン酸といった旨味成分の蓄積量に直結します。地鶏屋の暖簾を掲げる専門店の多くは、単に鶏肉を焼くだけではなく、素材が持つ強いアミノ酸のポテンシャルを最大限に引き出す専用の設備と火入れ技術を備えています。
消費者が混同しやすいのが地鶏と銘柄鶏の違いです。銘柄鶏はハーブや木酢液を配合した特殊な飼料を与えて肉質を向上させたブロイラーであり、血統規定のある地鶏とは明確に区別されます。専門の地鶏屋では、比内地鶏や名古屋コーチン、さつま地鶏をはじめとする三大地鶏や、各地の厳選された在来種を産地直送で仕入れている点が決定的な強みです。