岸田家の政治的足盤の始まりは、明治から大正にかけて幾度もの変遷を経て築かれた商家の隆盛に遡る。祖父である岸田正記氏は、満州や台湾など旧外地での百貨店事業(岸田百貨店)を成功させた実業家でありながら、昭和初期に旧衆議院議員へと転身を果たした人物だ。
単なる地方名士にとどまらず、ビジネスで培った財力と国際感覚を武器に中央政界へと躍り出た正記氏の存在こそが、のちに「政策通」や「実務型」と評される岸田家のDNAの原点となった。広島という被爆地の記憶を背負いながら、事業と政治の双方で基盤を固めた歴史が、その後の世襲の土台を静かに形作っていったのである。