ネット上や口コミで散見される頻尿対策の中には、医学的に極めて危険な誤解が横行しています。その最たるものが「トイレが近くて困るから、日中の水分補給を極限まで減らす」という自己判断です。
水分を意図的に断つと、尿が極度に濃縮されます。濃縮された高濃度の尿は、膀胱の内壁(尿路上皮)を強く化学的に刺激し、かえって過活動膀胱の症状を悪化させます。さらに、尿量が減ることで尿道からの細菌排出作用が失われ、膀胱炎の発症や再発を招く直接的な引き金になります。高齢者の場合は、脱水によって血液粘度が上昇し、脳梗塞や心筋梗塞といった致死的な血栓症を引き起こす重大なリスクと直結します。極端な水分制限は、百害あって一利もありません。
また、薬局で手に入る医薬品への過信にも注意が必要です。頻尿改善市販薬と漢方の評判を巡っては、インターネット広告で「飲むだけで夜のトイレが劇的に減る」といった過度な宣伝が目立ちます。市販薬として流通している八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などの漢方処方、あるいはフラボキサート塩酸塩製剤は、体質(証)や疾患のタイプに合致すれば一定の緩和効果を発揮します。
しかし、前立腺肥大症を抱える男性が抗コリン作用を持つ市販薬を服用した場合、膀胱の収縮力が極度に低下し、全く尿が出なくなる「尿閉(にょうへい)」という急性救急事態を引き起こす危険があります。漢方薬も胃腸虚弱の人には胃もたれや下痢をもたらすケースがあり、原因を特定しないまま市販薬を数ヶ月単位で漫然と飲み続ける行為は厳に慎むべきです。
では、トイレが近い時の受診は何科を選ぶべきでしょうか。正解は原則として「泌尿器科」です。女性の場合、「泌尿器科は男性が行く場所」という心理的抵抗から内科や婦人科を選ぶ傾向がありますが、専門的な膀胱機能検査(超音波による残尿測定や尿流測定)を行えるのは泌尿器科です。近年はプライバシーに配慮した女性専用の「女性泌尿器科(ウロギネコロジー外来)」を設置する総合病院やクリニックも全国で増加しています。一方、激しい口渇や多尿を伴う場合は一般内科や代謝内科の受診が推奨されます。