台所にある調味料の中で、見た目が非常によく似ている白粉末の代表が食塩と砂糖です。中学理科有機物と無機物の単元において、この2つを区別する実験は定番中の定番とされています。アルミホイルの上にそれぞれを乗せて加熱すると、その性質の差は明白です。
食塩と砂糖の違いは、熱を加えたときの挙動に端的に現れます。砂糖は融点が約185℃と低く、加熱すると次第に溶けて黄色から褐色へと変色(カラメル化)し、さらに熱し続けると黒い炭となって独特の焦げ臭い煙を立ち上らせます。これは砂糖が炭素・水素・酸素からなる有機物である証拠です。対照的に、食塩はナトリウムと塩素が強固なイオン結合で結びついた無機物です。融点は801℃と極めて高いため、家庭用の熱源やガスバーナーの炎程度ではパチパチと弾けるだけで、黒く焦げることは一切ありません。
そして一般の人が最も誤解しやすいのが「プラスチック有機物無機物どっち」という疑問です。街頭インタビューや教育相談の場で質問を投げかけると、「石油から人工的に工場で作られた化学製品だから無機物」「天然の木や紙とは違うから無機物」と答える人が少なくありません。「有機=天然・オーガニック」「無機=人工・ケミカル」という日常語のイメージが強烈に定着しているためです。
しかし、化学的な真実はプラスチックは紛れもない有機物です。プラスチックの原料は原油から精製されるナフサ(粗製ガソリン)であり、炭素原子が無数に長く連なった鎖状の構造(炭素骨格)を持っています。熱すれば溶けたり燃えたりして二酸化炭素と水を出し、条件が不十分であればスス(炭素)を出して黒く焦げます。「人工物か天然物か」は分類の基準ではなく、「炭素骨格を持つ化合物かどうか」が唯一の物差しなのです。