物語の舞台は、世界中が未知のウイルスへの恐怖に震えていた時期のダブリン。スーパーの行列で出会ったオリバーとキアラは、急速に惹かれ合っていく。ロックダウンが発令される直前、彼らは「一緒に暮らそう」という決断を下す。交際わずか数週間の男女が、外部との接触を完全に断たれた閉鎖空間で56日間を過ごす。この設定こそが、悲劇の舞台装置だった。
誰にも邪魔されない甘い時間のはずが、徐々に不協和音が響き始める。お互いの過去について語らないという暗黙のルール。スマートフォンに届く不審なメッセージ。そして、部屋の隅々に漂う「誰か別の人間」の気配。観客は、二人の視点が交互に切り替わる巧妙な構成によって、誰が被害者で、誰が加害者なのかという迷宮に迷い込んでいく。