事件が発生したのは、日曜日の夕暮れ時でした。1932年5月15日午後5時半頃、海軍青年将校である三上卓海軍中尉や黒岩勇海軍予備少尉らを中心とする一隊が、東京・永田町の首相官邸へ車横付けで乱入しました。
当時の首相官邸は警備が手薄であり、侵入した将校らは護衛の警察官を銃撃して負傷させると、奥の私室へと押し入りました。別動隊は内大臣牧野伸顕邸、立憲政友会本部、警視庁、日本銀行、三菱銀行、変電所などを同時多発的に襲撃しており、首都の機能を麻痺させて国家改造(軍事政権の樹立)を狙った計画的な武力蜂行でした。
しかし、発電所の爆破失敗などにより大規模な停電や首都機能の完全停止には至らず、最終的に首謀者たちは同日夜までに憲兵隊に自首。軍事政権の樹立というクーデターの第一目標は未遂に終わったものの、一国の現職首相が官邸内で直接殺害されるという前代未聞の衝撃を日本全土に与えました。