12誘導心電図は、心臓を12の異なる角度からカメラで撮影しているようなものです。どのカメラ(誘導)に異常波形が現れているかを確認することで、心臓を養う3本の太い冠動脈のうち、どこが詰まったのかを即座に特定できます。 特に命に直結しやすいのが前壁心筋梗塞の心電図の見極め方です。心臓のポンプ機能の主役である左室前壁や心室中隔に血液を送る「左前下行枝(LAD)」が閉塞すると、胸部誘導のV1〜V4でST上昇が認められます。前壁梗塞は心筋の広範囲がダメージを受けやすく、心原性ショックや重症心不全に直結する極めて危険な病態です。 一方で、胃のあたりやみぞおちの痛みを訴えることが多いのが下壁梗塞です。下壁心筋梗塞における心電図誘導としては、四肢誘導のII、III、aVFに鮮明なST上昇が記録されます。下壁を栄養する「右冠動脈(RCA)」や「左回旋枝(LCX)」の閉塞が原因であり、脈が極端に遅くなる房室ブロックや、右室梗塞を合併しやすい特徴を持っています。さらに、高位側壁を捉えるI誘導やaVL誘導、外側を捉えるV5・V6誘導のチェックも欠かせません。
こうした心筋梗塞における梗塞部位と誘導のまとめを把握しておくことで、患者が訴える症状(「冷や汗とみぞおちの違和感」「胸全体の締め付け感」など)と心電図の異常部位が一致しているかを瞬時に評価できます。