十日恵比須神社の正月大祭で参拝客を惹きつけてやまない最大の呼び物が、「福引き」です。一般的なおみくじや抽選とは一線を画し、「ハズレが一切ない」というめでたい神事として知られています。
福引きの受付を済ませて鈴を鳴らすと、神職や世話人から「大当たり〜!」という甲高い掛け声が一斉に上がり、授与品となる縁起物と福笹が手渡されます。この祝祭空間の演出こそが、古くから博多商人の心を掴んできた心理的エンジンとなっています。
福引きで授与される縁起物には、商売繁盛を象徴する多彩な品目が用意されています。
- 張子の恵比須・大黒:福々しい笑顔をたたえた伝統工芸品。店先や神棚に飾る定番の縁起物。
- そろばん・大福帳:商売の計算が立ち、帳簿が潤うことを祈願する実用模した縁起具。
- 熊手・宝船・米俵:福をかき集め、富を積み上げる象徴として事業主から絶大な人気を誇る。
- 大うちわ・御神酒:邪気を払い、家内安全と繁栄を招くための伝統的な授与品。
さらに見逃せないのが、神社独自の神宝である「えびす銭」の存在です。これは神社から商売の元手(種銭)として借り受け、財布や金庫に収めて1年間大切に所持し、翌年の参拝時に増やした感謝とともに神社へ返納して新しい銭を授かるという、博多商人独自の信仰システムです。この「元手を借りて返す」という循環構造が、何代にもわたる参拝者のリピートを生み出しています。