岸辺のアルバム衝撃の結末と多摩川水害の実話|名作が語り継がれる真相

岸辺のアルバム衝撃の結末と多摩川水害の実話|名作が語り継がれる真相

岸辺のアルバム衝撃の結末と多摩川水害の実話|名作が語り継がれる真相の全体像を分かりやすくまとめてご紹介します。

高度経済成長期を経て、日本中が「一億総中流」の幻想に酔いしれていた1970年代後半。テレビドラマの世界では、ホームドラマといえば家族全員が食卓を囲んで笑顔を交わす心温まる物語が主流でした。その生ぬるい常識を真っ向から粉砕したのが、山田太一脚本によるTBS系金曜ドラマ『岸辺のアルバム』でした。

物語の舞台は、多摩川沿いに建つ瀟洒な一戸建て。商社に勤める父・田島謙作、貞淑な専業主婦の母・則子、有名私立大学に通う長女・律子、そして大学受験を控えた長男・繁の4人家族です。周囲から見れば絵に描いたような理想のマイホーム生活ですが、その内情はそれぞれが他者には言えない深刻な秘密を抱え、冷え切った仮面を被り合っていました。

ドラマのあらすじは、ある日突然、母の則子のもとにかかってきた見知らぬ男(竹脇無我)からの不可解な電話から狂い始めます。日常の退屈と満たされない孤独の隙間を突かれた則子は、徐々に男との不倫関係に足を踏み入れていきます。しかし、綻びを見せていたのは母だけではありませんでした。エリートビジネスマンの父は東南アジア出張での愛人問題や社内不正の板挟みに苦悩し、優等生のはずの長女はアメリカ人男性との関係によるレイプ未遂と望まぬ妊娠の危機に怯え、浪人生の長男は家庭教師の女子大生に淡い恋心を抱きながら家庭の不穏な空気を敏感に察知していきます。

本作の画期的な点は、家庭の崩壊を誰か一人の悪意のせいにするのではなく、「各人が自立した個として抱える孤独や欲望」が引き起こす必然として淡々と描いた点にあります。自著や当時の関係者インタビューにおいて山田太一は、「家族という共同体が持っていた息苦しさと欺瞞を、綺麗事ではなく剥き出しの人間として描きたかった」と振り返っています。家族全員が秘密を隠しながら繕うリビングの会話劇は、サスペンス映画以上の緊迫感をもって視聴者の胸に突き刺さりました。

山本 拓海
著者

山本 拓海

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。