港湾都市の治安を象徴してきた「水上警察署」ですが、現在その名を冠した警察署は神奈川県警の横浜水上警察署と兵庫県警の神戸水上警察署のわずか2署しか存在しません。
昭和中期には東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、下関、門司など全国の主要港に水上警察署が設置されていました。当時、港湾エリアは倉庫街や貨物船の荷役作業場が中心であり、陸上とは完全に隔離された「海と港の独立社会」を形成していたため、水上専門の警察署を置く必然性があったのです。
しかし、コンテナ輸送の自動化や港湾地域の再開発が進むにつれ、ウォーターフロントにはタワーマンションや大型商業施設が林立し、陸上と海上の境界線が急速に曖昧化しました。その結果、陸上署と水上署の二重管轄による非効率が顕在化し、各都道府県警は水上署を近隣の陸上警察署へ統合するか、本部の直轄部隊である「水上警察隊」や「地域部自動車警ら隊・機動隊」へ機能移管する再編を一気に推し進めました。
大阪湾の治安を長年守ってきた大阪水上警察署も、2014年(平成26年)に大阪府港警察署へ統合され、その歴史に幕を下ろしています。現在残る横浜と神戸の水上警察署は、国際貿易港としての歴史的特殊性や膨大な外国人出入国動態、広大な観光親水エリアの警備需要を一身に背負い、専門署としての存在意義を維持し続けています。