インターネット上のQ&Aサイトなどで今なお根強く信じられている誤解の一つに、「書き順を間違えて入力すると、手書き辞典は全く反応しない」という俗説があります。
結論から言えば、現代の主要な認識エンジンにおいてこの説は完全に過去の遺物です。2010年代初頭の初期型エンジンはストロークの順序(画数と筆順の配列)に依存する比重が高かったため、正しい順序で書かないと候補から除外される仕様が存在しました。しかし、現在の画像特徴抽出アルゴリズムは、最終的に画面上に残った「骨格の線画パターン」を多次元ベクトル解析で処理しています。
つまり、たとえ「右」や「左」の初筆を間違えようが、最後の払いから書き始めようが、描かれた図形の輪郭さえ整っていれば正確に目的の漢字を提示してくれます。「書き順が分からないから引けない」のではなく、「書き順を知るために手書きで検索する」という使い方が技術的に完全に成立しています。
ただし、唯一の盲点となるのが「一筆書きによる線の結合」です。急いで書くあまり、本来離れているべき2画を連続して繋げて描いてしまうと、認識エンジンは別の部首(例えば「木」が「扌」と誤認されるなど)として解釈しやすくなります。書き順を気にする必要はありませんが、「画と画を不用意に連結させない」ことだけが、高精度な判定を引き出すための現場の鉄則です。