個人投資家が集まるSNSや掲示板では、キオクシアに対する極端な楽観論と悲観論が飛び交っています。しかし、そこには半導体ビジネスの力学を誤解した「典型的な認知の歪み」が散見されます。
誤解1:「生成AIブームだからキオクシアもエヌビディアのように上がり続ける」
ネット上で頻繁に見られる最大の誤解が、GPU(演算装置)とNANDフラッシュメモリ(記憶装置)のビジネスモデルを同一視する見方です。エヌビディアが供給を独占するGPUとは異なり、NAND市場は競合が複数存在する完全競争市場です。たとえ需要が強くとも、各社が巨額の設備投資(CAPEX)を一斉に投じれば、数四半期後に供給過多へ転じるリスクを常に孕んでいます。この市場サイクルを無視したバイ・アンド・ホールドは大きな落とし穴となり得ます。
誤解2:「借入金が巨額で経営破綻リスクが高い」
過去の赤字決算や東芝からの分離独立時の借入金負担を理由に、「キオクシアは財務が脆弱だ」と決めつける声も一部に根強く残っています。しかし、公式決算資料を精緻に読み解けば、上場に伴う資本増強と好業績によるフリーキャッシュフローの急回復により、ネットD/Eレシオは劇的に改善しています。主要取引銀行団とのリファイナンスも完了しており、目先の資金繰りを懸念するフェーズはすでに過去のものとなっています。