滑走路を猛加速する航空機のコクピット内では、パイロット同士が緊密なコールアウト(発声確認)を交わしています。その中核を成すのが、「V1(ブイワン)」「VR(ブイアール)」「V2(ブイツー)」と呼ばれる3つの基準速度です。
離陸決心速度 V1は、「安全に離陸中止(RTO: Rejected Takeoff)ができる限界速度」を指します。滑走中に重大なエンジントラブルや火災警報が発生した場合、V1未満であればフルブレーキングによって滑走路内で安全に停止可能です。しかし、機体がV1を超えた瞬間に、パイロットは「何があっても離陸を強行する」という判断を下します。
V1を超えた後に急ブレーキをかけても滑走路の残長が足りず、オーバーランして大惨事につながる物理的限界点に達するためです。現代の多発旅客機は、片方のエンジンが完全に停止した状態でも安全に離陸上昇を続けられるよう設計・認定されています。
続いて機首を上げるタイミングを示すのが回転速度 VR(Rotation speed)です。副操縦士の「Rotate!」というコールの合図で機長(または操縦担当パイロット)が操縦桿を手前に引き、前輪を持ち上げて迎角を作ります。そして地上を完全に離れ、安全な上昇勾配を維持する速度が「安全離陸上昇速度 V2」です。