劇場版シリーズにおいて、野原ひろしは幾度となく観客の涙腺を刺激し、作品を映画史に残る名作へと押し上げてきました。その筆頭が、2001年公開の『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(原恵一監督)です。
20世紀のノスタルジーに囚われ、精神が子どもに戻ってしまったひろしが、自分の靴下の強烈な臭いを嗅いだ瞬間から始まる「ひろしの回想シーン」は、日本アニメーション屈指の約3分間として語り草になっています。父・銀の介の自転車の後ろに乗っていた少年時代、集団就職での上京、仕事での挫折と苦悩、みさえとの出会い、しんのすけが生まれた日の大雨、泥まみれになりながら家族を守ってきた歳月――。一切のセリフを排し、名曲の旋律に乗せて描かれた一人の男の人生の歩みは、観る者すべての胸を打ちました。
さらに2014年公開の『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(高橋渉監督・中島かずき脚本)では、父親の威厳と家族愛の葛藤が極限まで描かれました。自らを本物の父親だと信じる「ロボとーちゃん」と生身のひろしが対峙し、家族を守るために繰り広げる腕相撲のラストバトルは、「家族のために自分を削って働く父親の切なさ」を完璧に描き切り、日本中を感動の渦に巻き込みました。