King Gnuの最大の強みであるツインボーカルのコントラストは、『飛行艇』において極限の完成度を見せています。声楽出身である井口理のクリアで天高く抜けるハイトーンボイスと、常田大希の歪んだ拡声器を通したような低音のボーカルワークが、絶妙なバランスで交差します。
Aメロ・Bメロにおける井口の繊細な歌い回しは、荒涼とした世界に差し込む一筋の光を描写し、そこへ重なる常田のバッキングボーカルが楽曲に不穏な緊張感と推進力を与えます。そしてサビのユニゾンでは、二人の声質が衝突し融合することで、1人では決して生み出せない分厚いエネルギーの塊となってリスナーを圧倒します。
この緻密な歌割り(パート分け)こそが、単なる大味なロックナンバーにとどまらず、何度聴いても新たな発見をもたらす芸術的な深みを生み出している最大の要因です。