「くりそつ」の辞書的な意味は、名詞・形容動詞として用いられる「そっくり」「非常によく似ていること」です。対象となるのは人間の顔立ちや体型にとどまらず、声質、仕草、性格、さらにはモノの形状やシチュエーションの一致にまで及びます。
原語である「そっくり」と「くりそつ」の間には、単なる音の並び替え以上のニュアンスの差異が存在します。「そっくり」が客観的な類似事実をフラットに伝える標準的な表現であるのに対し、「くりそつ」は発話者の遊び心や親密さ、あるいは意図的な誇張を帯びる点に決定的な違いがあります。「彼と弟はそっくりだ」と言えば純粋な観察記録ですが、「彼と弟、マジでくりそつだよね」と言い換えると、類似性の高さに対する驚きや面白がりが強く前景化します。
発祥の経緯を辿ると、この言葉は1950年代から1960年代にかけて、日本のジャズミュージシャンたちの間で交わされていた秘密めいた隠語に辿り着きます。一般人には意味を悟らせない符牒(ふちょう)として使われ始め、やがて放送業界や芸能界のスタッフへと伝播していきました。