ショートケーキ市場において、メロンが「苺の代替品」ではなく「初夏の主役」へと昇格した最大の理由は、メロンという果実が持つ特異な成分バランスにあります。苺の魅力は爽快な酸味と生クリームの甘さのコントラストですが、メロンの魅力は圧倒的な水分量(約88〜90%)と豊かな芳香成分(エステル系化合物)が、生クリームの乳脂肪分(油脂)と口の中で瞬時に溶け合い、芳醇なソースへと変化する一体感にあります。
洋菓子の世界では従来、水分の多い果実はスポンジをふやかしてしまうためタブー視されていました。しかし、スポンジ生地にメロン果汁を染み込ませたり、低脂肪で口どけの早い特製生クリームを開発したりする技術革新が起こったことで、果汁そのものをケーキのソースとして味わう新感覚のスイーツが完成したのです。一度この濃厚かつ軽快な口どけを体験した消費者が、「苺よりも贅沢感がある」「重たくないのに満足度が高い」とリピーター化する現象が全国で起きています。
さらに、メロンの果肉色による味のバリエーションも消費者を惹きつける要因です。青肉(緑肉)メロンは爽やかな清涼感と気品ある芳香、キレのある甘さが特徴で、クラシックな王道ショートケーキに最適とされます。一方の赤肉メロンはカロテノイド由来のコクと芳醇な甘み、野性味のある強い香気があり、リッチな配合のクリームやカスタードと抜群の相性を誇ります。初夏はすっきりとした青肉、盛夏から晩夏にかけてはコク深い赤肉へとリレー展開するパティスリーが増加したことも、消費者の購買意欲を長期間持続させる巧みな仕掛けとなっています。