SNSやマネー系メディアで「年金は繰り上げて60歳から受け取るのが一番賢い」という意見が拡散される背景には、現役世代の健康不安やインフレリスクがあります。「70歳や75歳まで繰り下げて受給額を増やしても、長生きできなければ1円も得にならない」「元気なうちに自由に使えるお金が欲しい」という心理的アプローチが強い共感を呼んでいます。
しかし、制度の仕組みを冷静に紐解くと、単純な損得勘定だけでは語れない冷徹なリスクが存在します。制度改正以降、繰上げ減額率は月0.4%へと緩和されましたが、それでも60歳時点で受給を開始すれば本来もらえる年金額から一律24%カットされ、この減額率は70歳、80歳、90歳になっても一生涯元に戻ることはありません。
「早くもらう=賢い」と安易に決断する前に、生涯受給額の損益分岐点や、税金・社会保険料を差し引いた実際の手取りシミュレーションを正しく把握することが不可欠です。