「以前はとにかく軽くしてくださいと頼んでいたお客様が、今は口を揃えて『厚みは残したい』とおっしゃいます」
都内有名サロンのクリエイティブディレクターは、現場のリアルな空気感をそう明かす。2020年代前半に流行したハイレイヤーやクラシカルなウルフカットは、毛先を削ぎ落とすことで圧倒的な抜け感を表現していた。だが、日々のアイロンがけが欠かせなかったり、時間が経つと毛先がパサついてまとまらなくなったりと、維持の難しさが大きな課題でもあった。
2026年、ヘアトレンドの視線は真逆に振れている。面のツヤと重厚感を土台に残しつつ、表面や顔まわりにだけ計算し尽くされた段差を入れるアプローチが主流となった。毛束がまとまる安心感がありながら、風が吹いた瞬間だけ軽やかに揺れる。この二面性こそが、現代の都市生活者が求める「洗練」の正体だ。