ネット上のまとめ記事やSNSの書き込みにおいて頻繁に見受けられるのが、「アイーンはバカ殿様の決め台詞として開発された」という言説です。しかし、これは明確な順序の誤認といえます。
確かにバカ殿様 アイーン 登場回の数々は視聴率的にも凄まじく、白塗りメイクにちょんまげ、金襴の衣装をまとった殿様が家老役のいかりや長介さんや桑野信義さんを煙に巻く場面で「アイーン」を繰り出すシーンは番組のハイライトでした。しかし前述の通り、ポーズ自体の起源はドリフの通常コントや『カトケン』の日常劇コントにあります。
キャラクターの強烈なビジュアルと「アイーン」のインパクトが完璧に合致した結果、「バカ殿様=アイーンの生みの親」というパブリックイメージが定着したに過ぎません。志村さんはキャラクターごとにポーズのニュアンスを変えており、バカ殿様では権力を笠に着たお茶目な開き直りとして、麻布十番の居酒屋にいそうな「変なおじさん」では逃亡直前の威嚇として使い分けていました。ひとつの型を複数のペルソナに適応させる演技力の奥深さこそ、真に評価されるべきポイントです。