ゴーヤ特有の突き抜けるような苦味の主成分は、ウリ科植物に含まれるサポニンの一種「モモルデシン」です。胃腸の粘膜を保護し食欲を増進させる優れた健康成分ですが、濃度が高すぎると強いえぐみとして感じられます。このモモルデシンを適度に残しつつ、絶妙な旨味へと昇華させるには、調理科学に基づいた3つの下処理ステップが鍵を握ります。
第一に、縦半分に切ったゴーヤのスプーンによるワタ取りです。「白いワタが最も苦い」と誤解されがちですが、農業試験場などの成分分析データによると、苦味成分の約8割以上は外側の緑色の果肉(表皮近く)に集中しています。ワタを取り除く本来の目的は、水分を含みすぎて佃煮が水っぽくなるのを防ぎ、食感を均一にするためです。スプーンの背で軽くこそぎ落とす程度で十分であり、果肉まで削り落とす必要はありません。
第二に、「2mm〜3mm幅の薄切り+塩もみ・水分絞り」です。薄くスライスすることで細胞壁を適度に破壊し、塩分による浸透圧差を利用して苦味成分を含んだ水分を外へ排出させます。ゴーヤ2本(正味約500g)に対して小さじ1の塩を振り、全体に揉み込んで10分ほど置いた後、流水でサッと流して両手でしっかりと水気を絞ります。
第三の裏技が「熱湯での短時間ブランチング(下茹で)」です。モモルデシンは水溶性の性質を持つため、沸騰した湯で1分〜1分半ほど固めに下茹ですることで、過剰な苦味が湯の中に溶け出します。茹ですぎるとゴーヤ特有のシャキシャキとした歯ごたえが損なわれるため、ザルに上げた後は冷水に取らず、うちわ等で一気に粗熱を取るのがプロの現場における鉄則です。