杉浦幸の経歴を語る上で外せないのが、1985年から1986年にかけてフジテレビ系で放送された大映ドラマ『ヤヌスの鏡』です。雑誌『Momoco』のモモコクラブなどで注目を集めていた彼女は、本作のオーディションで数千人の候補者の中から主役に抜擢されました。
「古代ローマの神・ヤヌスは、物事の初めと終わりをつかさどる神であった…」という芥川隆行の重厚なナレーションで始まる本作において、杉浦幸が演じたのは厳格な祖母に折檻されて育った気弱な優等生・小沢裕美と、夜の街で暴れ回る凶悪なリーダー・大沼ユミという極端な二重人格でした。当時16歳、演技経験がほぼ皆無だった彼女に対し、大映テレビ特有の過酷な演技指導が連日課されたことは、後年のインタビューや手記でも述懐されています。
その凄まじい緊張感とプレッシャーの中で鍛え上げられた演技は社会現象を巻き起こし、最高視聴率20%超を記録。翌1986年1月には、自身が主演を務めたドラマの挿入歌とも連動したシングル『悲しいな』でアイドル歌手としてもデビューを果たしました。オリコンチャート初登場4位を記録し、同年の新人賞レースを席巻。『ヤヌスの鏡』以降も『花嫁衣裳は誰が着る』など大映ドラマの看板女優として連続起用され、80年代後半のテレビカルチャーを象徴するトップアイコンとなったのです。