天皇陛下と滋賀県の間にある特別な絆を語る上で欠かせないのが、陛下が長年研究を続けてこられた「水運史(水上交通の歴史)」と琵琶湖の存在です。天皇陛下は学習院大学大学院時代から中世の瀬戸内海や淀川の水運を研究され、その後英国オックスフォード大学へのご留学中にはテムズ川の水運史を専攻されました。
日本国内における水上交通の歴史を紐解く際、古代から畿内と北陸・東国を結ぶ大動脈であった琵琶湖は、まさに研究の結節点にあたります。陛下は皇太子時代から国際会議「世界水フォーラム」等で基調講演を務められるなど、水資源や環境問題に関する世界的な研究者としても知られていますが、その知見の基盤には常に琵琶湖の水利と歴史への深い探求心がありました。
かつて滋賀県立琵琶湖博物館や県内の水運遺構を視察された際の手記や関係者の証言によると、陛下は古文書に記された丸子船の構造や、湖上交通が地域経済に与えた影響について専門家顔負けの鋭いご質問を投げかけられたといいます。今回の滋賀ご訪問は、国家の象徴としてのご公務であると同時に、研究者として情熱を注ぎ続けてこられた「原点の水辺」への巡礼という側面も併せ持っているのです。