「早起きは三文の徳」というフレーズを聞いたとき、多くの人が「大金持ちになれるほどの莫大な利益」を連想しがちです。江戸時代の寛永通宝(一文銭)を基準に換算すると、一文は約20〜30円程度。つまり「三文」は現代の貨幣価値でわずか60円〜100円前後に過ぎません。
自動販売機の缶コーヒー1本すら買えない金額です。ここから見えてくるのは、「早起きしても手に入るのはせいぜい数十円程度のわずかな得にすぎない」という、どこか醒めたニュアンスを含んでいた可能性です。「わずかなことでも損をするよりはマシ」という戒めが、いつしかポジティブな教訓へと変化していきました。
表記における「徳」と「得」の違いも押さえておきたいポイントです。本来の故事成語としては、人徳や品格が備わるという意味合いを持つ「徳」が正統とされます。一方で、金銭的な利益や実利を指す「得」を用いるケースも広く定着しました。国語辞典や公の文書では「徳」を基本形としながらも、現代の実利主義的な朝活ブームにおいては「得」と書いても間違いとは言い切れない柔軟な扱いになっています。