「みんなのターボーを見かけなくなった決定的な理由」として、長年ネット掲示板やSNSで語り継がれてきたのが、1989年(平成元年)に発生した絵本回収騒動です。結論から言えば、この出来事がきっかけで露出の仕方が見直されたことは事実ですが、キャラクターそのものが「封印」や「抹殺」されたわけではありません。
騒動の発端は、当時サンリオが出版していたたあ坊の関連書籍(『たあ坊のおことば』など)における一部の描写でした。作中でたあ坊が「あー」「うー」と言葉をうまく発声できない様子や、口を開けてぼんやりしている姿、独特の所作を描いた表現に対し、養護学校の関係者や障害者団体から「知的障害や言語障害を抱える子どもたちを揶揄・からかいの対象にしているのではないか」という指摘が寄せられたのです。
報道各社の当時の記録およびサンリオの公式対応資料によると、同社は指摘を重く受け止め、1989年5月に該当書籍の自主回収を即座に決定しました。同時に、関係団体との対話の場を設け、制作意図に差別的な意図は一切なかったことを説明しつつも、受け手への配慮が不足していた点を真摯に謝罪しました。この迅速かつ誠実な危機管理対応により、事態は泥沼化することなく収束へと向かいました。
しかし、なぜこれが「永久封印」という極端な噂に変貌したのでしょうか。背景には、以下の3つの要素が複雑に絡み合っていました。
- 表現のリファインに伴う一時的なメディア調整:サンリオは回収後、たあ坊のキャラクター性を「明るく素直で、はきはきと言葉を話す元気な男の子」として再構築しました。この設定変更の定着を図る過程で、過度なメディア露出を一時的に抑えた時期が存在します。
- 90年代後半のハローキティブームと世代交代:1990年代中盤以降、社会現象となった「女子高生ハローキティブーム」や、バッドばつ丸、ポムポムプリンなどの新鋭キャラクターが台頭したことで、サンリオショップの店頭棚が自然と入れ替わりました。
- 初期インターネットの都市伝説化:2000年代初頭の2ちゃんねる(現5ちゃんねる)やテキストサイト全盛期に、過去の回収騒動がセンセーショナルに切り取られ、「放送禁止になった」「タブー視されて消された」という尾ひれがついて拡散してしまいました。
実際には絶版や発売中止になったのは問題とされた特定の書籍や一部グッズのみであり、キャラクター自体はその後も一貫して存続しています。企業の社会的責任(CSR)を果たし、時代の要請に合わせて表現を洗練させたプロセスが、情報の伝言ゲームによって「消えた理由」として誤認されてしまったのが真相です。