岡田氏ほど、視聴者とネットコミュニティの間で評価が真っ二つに割れた人物も稀です。ネット上の言説やソーシャルリスニングデータを分析すると、評価の振れ幅にはメディア特有の力学が作用していました。
放送初期の2020年前半、Yahoo!ニュースのコメント欄やSNSでは「政府が隠したがるリスクを命がけで教えてくれた」「羽鳥慎一モーニングショーで岡田先生の話を聞くのが毎朝の日課」といった、「孤高の告発者」としての絶大な支持が寄せられていました。既得権益に屈しない女性科学者というアングルは、不安を抱える大衆のヒーロー像に完全に合致していたのです。
しかし、時間の経過とともに論調は反転します。5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)やX(旧Twitter)では、「毎日不安を過剰に煽りすぎている」「言っていた悲観的な予測が外れた」「衣装が派手になってタレント気取り」といった批判的な声が急増。特に、医療現場で実際に治療にあたる臨床医や一部の感染症専門医から、疫学的な予測精度の甘さやメディア受けを狙ったトーンに対する学術的批判が公然と展開されるようになりました。
この激しいギャップが生じた根本原因は、「警鐘を鳴らす公衆衛生学者」と「過激な見出しを求めるテレビワイドショー」の共犯関係にありました。視聴率を維持したい制作側は、最も危機感を強調する岡田氏のコメントを欲し、岡田氏側も事態の深刻さを伝えるために強い言葉を選ばざるを得なかった。この増幅回路が、結果として彼女を「稀代のオピニオンリーダー」と「不安を煽るオオカミ少年」という極端な二面性の中に閉じ込めてしまったのです。