アニメ『ばらかもん』が放送から10年以上を経てもなお語り継がれる最大の要因は、計算し尽くされた音響演出と、後にも先にも例を見ないキャスティングの妙にあります。
主役の半田清舟を演じたのは、実力派声優の小野大輔さん。プライドが高く繊細で、すぐにパニックに陥る面倒くさい青年でありながら、どこか憎めず純粋な心を失っていない清舟の二面性を見事に表現しました。そして、その対極として作品の中心に君臨したのが、琴石なる役を務めた当時子役の原涼子さんです。
制作陣のこだわりとして特筆すべきは、島の子どもたちを演じるキャストに本物の子役を多数起用した点です。久保田陽菜役の遠藤璃菜さんをはじめ、子役ならではの舌足らずな発音や計算のない感情の爆発をそのまま収録したことで、スタジオ内に本物の「島の空気」が充満しました。さらに、中学生の山村美和を演じた古木のぞみさんは自身が長崎県五島列島出身であり、方言指導としてもクレジットされるなど、徹底した現地再現への情熱が注ぎ込まれたのです。
脇を固める布陣も極めて豪華であり、新井珠子役の大久保瑠美さん、木戸浩志役の内山昂輝さん、川藤鷹生役の諏訪部順一さん、神崎康介役の梶裕貴さんなど、第一線で活躍するトップ声優陣が絶妙な間合いで脇を固めました。
そして、この奇跡的な世界観を完璧に昇華させたのが主題歌です。
オープニングテーマであるSUPER BEAVERの「らしさ」は、「自分らしさとは何なのか」というアイデンティティの迷路に迷い込んだ清舟の葛藤と完全にシンクロし、多くのリスナーの涙を誘いました。「人真似の何が悪い」「自分らしさの檻に囚われるな」というメッセージは、作品を象徴するアンセムとして今なお音楽シーンで歌い継がれています。一方、エンディングテーマであるNoisyCellの「Innocence」は、美しくもどこか切ない五島の夕暮れと波の音を想起させるエモーショナルなロックバラードであり、視聴後の心地よい余韻を完璧に担保していました。