2019年末、音楽関係者や視聴者の間で最大の注目を集めたのが、「第70回NHK紅白歌合戦にスピッツが出場するのか」という点でした。紅組司会は『なつぞら』ヒロインの広瀬すず。朝ドラ100作目のメモリアルイヤーであり、主題歌が大ヒットを記録していたことから、NHK側からの熱烈なオファーがあったことは当時の音楽業界でも広く報じられていました。
しかし、最終的に発表された出場歌手一覧にスピッツの名はありませんでした。ネット上では「なぜ出ないのか」「NHKとトラブルがあったのか」といった憶測が飛び交いましたが、真相はスピッツというバンドが結成以来貫いてきた活動哲学にあります。
スピッツはメジャーデビュー以降、「ロビンソン」や「チェリー」「空も飛べるはず」などのメガヒットを連発した黄金期でさえ、紅白歌合戦をはじめとする巨大音楽賞や年末の大型歌番組への出演を基本的に固辞してきました。その理由は、テレビ向けの華やかな演出よりも、全国各地のホールやライブハウスで自分たちの音をファンに直接届けることを最優先にしてきたためです。
長年のファンからは「紅白に出ないのがスピッツ」「広瀬すずさんとの共演は見たいけれど、自分たちのスタイルを崩さない姿勢こそが信頼できる」と、むしろその頑ななまでのマイペースぶりを支持する声が圧倒的でした。安易な話題作りに乗らず、自らの矜持を守り抜いたからこそ、楽曲自体のピュアな輝きが損なわれずに保たれたと言えます。