商業映画の世界で名声を得た八名が、晩年にかけて最も情熱を注いだのが「自主制作映画の監督」としての活動と、「被災地ボランティア活動」である。
2010年代以降、八名は『駄菓子屋小春』や『おやじの釜めしと編みかけのセーター』といった温かなヒューマンドラマを自ら企画・監督・主演として世に送り出した。これらの映画監督作品において特筆すべきは、大手配給会社による興行収入優先のシステムを排し、地方の公民館や被災地の仮設住宅、学校の体育館などで無料あるいは低価格の上映会を自ら開いて回った点にある。
この活動の根底には、1995年の阪神・淡路大震災での原体験がある。壊滅的な被害を受けた神戸の街に、八名は悪役商会の仲間たちとともにワゴン車で駆けつけ、温かい食事の炊き出しを行った。被災者の中には、悪役商会の強面たちを見て最初は驚く者もいたが、八名が「悪党が炊き出しに来たぞ、元気を出しな!」と声をかけると、張り詰めていた現場にどっと笑いが起きたという。
2011年の東日本大震災、そして2016年の熊本地震においても、八名は高齢の身を押して被災地へ足を運び続けた。行政の支援が届きにくい避難所の隅々にまで青汁や生活物資を届け、避難生活で笑顔を失った高齢者や子どもたちを抱きしめた。「悪役として人に嫌われる役を何十年もやってきたからこそ、人を喜ばせる温もりがいかに尊いかが骨身にしみる」――八名が手記で綴ったその言葉は、彼がメガホンを取る自主映画の優しいストーリーと完全に響き合っている。