専務取締役の報酬は、一般社員の給与体系とは完全に切り離され、株主総会の決議および取締役会の答申を経て決定されます。労政時報や産労総合研究所、東京証券取引所の開示資料をもとに分析した市場規模別の報酬水準は、企業のステージによって劇的な開きを見せています。
東証プライム市場上場企業における専務取締役の年間役員報酬は、平均で約3,800万〜5,400万円が相場中央値です。時価総額上位のグローバル製造業やメガバンク、総合商社などでは、業績連動賞与や株式報酬を含めて7,000万円から1億円の大台に乗るケースも散見されます。かつて有価証券報告書で1億円以上の個別開示対象となる役員は社長が大半でしたが、近年は業績好調な専務が名を連ねる光景も珍しくありません。
これに対し、東証スタンダード市場上場企業では2,400万〜3,600万円前後、東証グロース市場の新興成長企業では1,400万〜2,600万円前後が推計値となります。新興企業の場合は固定基本報酬を抑える代わりに、ストックオプションや譲渡制限付株式(RS)といったキャピタルゲイン型のインセンティブが手厚く付与される傾向が顕著です。
一方、資本金1億円未満の中堅・中小企業における専務取締役の年収は、1,200万〜1,800万円前後が一般的なゾーンです。中小企業の場合、専務ポストには創業メンバーやオーナー経営者の親族が就任するケースが多く、会社全体の営業利益水準や財務基盤の余力に報酬額が直結します。
特筆すべき構造変化として、2020年代半ば以降、「役員退職慰労金制度の廃止」と「業績連動・ESG指標連動型報酬へのシフト」が定着した点が挙げられます。従来の日本企業に見られた「長く勤め上げて引退時に多額の慰労金を手にする」という年功序列型の報酬モデルは完全に過去のものとなりました。現在では、単年度の連結営業利益目標の達成度や中長期の株主還元率(TSR)によって専務の報酬が毎年激しく上下します。高年収の裏には、業績不振の際にいつでも報酬カットや解任の憂き目に遭う厳しい成果責任が張り付いています。