雨の日のライディングにおいて、なぜこれほどまでにタイヤが接地感を失うのか。その根底にある雨の日バイク滑る理由は、路面とタイヤトレッドの間で発生する摩擦係数(μ)の急激な低下にあります。乾燥したアスファルトの摩擦係数は通常0.7〜0.8程度を維持していますが、一度雨が降ると0.4〜0.3前後にまで半減します。さらに雨の降り始めは、アスファルトの隙間に蓄積していたホコリ、砂利、排気ガスに含まれる未燃焼油分が浮き上がり、目に見えない「油膜ローション」が形成されるため、豪雨時よりも初期の降り始めこそが最も滑りやすいトラップとなります。
なかでも絶対に回避すべき筆頭格が、バイク雨の日マンホールスリップ注意点として語られる金属構造物と路面標示です。濡れたマンホールや工事用の敷鉄板、橋梁の継ぎ目にある伸縮継手(エキスパンションジョイント)の摩擦係数は0.2以下にまで落ち込みます。これは圧雪路面や凍結路面とほぼ変わらない危険水準です。走行中に車輪がこれらの上を通過する際、わずかでもバンク(傾き)していたり加減速のトルクがかかったりしていると、瞬時にリヤやフロントが横滑りを起こし、人間が反射神経でカウンターを当てる猶予すら与えられずに路面へ叩きつけられます。
市街地特有のトラップにも警戒が必要です。通勤通学路に数多く潜む原付雨の日通学通勤危険ゾーンの代表例が、横断歩道や進行方向を示す「ペイント白線」や「路側帯の緑色のカラー舗装」です。道路標示の塗料にはガラスビーズなどが混ぜられているものの、水分を吸わない非浸透性素材のため、タイヤとの間に水膜が形成されやすく、ハイドロプレーニングに似た滑走状態を引き起こします。駅前ロータリーのバス停付近にこびりついた軽油・オイル跡や、秋口から初冬にかけて水分を含んで路面に張り付いた落ち葉も、踏んだ瞬間に車体をすくい上げる見えない地雷です。