『ザ・ミッシング~囚われた少女~』の脚本が国内外で天才的と評される理由は、「過去(2014年)」「現在(2016年)」「事件の発端(1991年〜2003年)」という複数の時間軸が、あえて時系列順ではなくモザイク状に配置されている点にあります。初見の視聴者が混乱しやすいこのタイムラインを、因果関係順に整理して紐解きます。
1991年〜2003年:過去の汚点と連続失踪の始まり
湾岸戦争下の1991年、イラク・クルディスタン地域に駐留していた英国軍の兵士たち(アダム・ゲトリック、エイドリアン・ストーン、ヘンリー・リード)が、現地の少女を誤って火災に巻き込み死なせてしまう事件が発生します。彼らは保身のために事実を隠蔽し、固い沈黙の契約を結びました。
その後、ドイツの軍基地に戻った犯人は異常な衝動を抑えられず、2000年にフランスでソフィー・ジローを誘拐。さらに2003年には、軍基地内で暮らす英国軍大尉サムの娘、アリス・ウェブスターを拉致し、地下室での長期監禁を始めます。
2014年:ソフィーの身代わり帰還と偽装自殺
アリスの病死を受け、ソフィーが「アリス」としてエッケンハウゼンの町に生還。彼女は病院で「ソフィー・ジローという少女も一緒に監禁されていた」と嘘の証言をし、廃業した食肉処理場に捜査の手を向けさせます。犯人は別の無関係な男に罪を着せ、自らの痕跡を消し去ろうと画策しました。
しかし、母ジェマの鋭い眼差しに耐え切れなくなったソフィーは、ウェブスター家の庭にある物置小屋に自ら火を放ちます。この火災によってアリスの骨(あらかじめ犯人が用意していた本物のアリスの遺骨)が発見され、世間は「心神喪失となったアリスが焼死した」と信じ込まされました。ソフィー自身は炎の混乱に紛れて逃走し、再び犯人の元へと身を隠したのです。
2016年(現在):ジュリアン・バティストの追跡と決着
火災のショックで家族は完全に崩壊。父サムは顔面に重度の火傷を負い、心神を喪失して基地の同僚女性と不倫関係に陥り、息子マシューは非行に走っていました。一方、脳腫瘍を患い余命宣告を受けながらも単身捜査を続行していたジュリアン・バティストは、中東イラクからドイツ、そしてスイスへと犯人の足取りを追い詰めます。