「昔もらった薬を飲んでも大丈夫なのか?」という問いに対し、調剤現場の薬剤師たちは一様に強い危機感を示す。市販薬の箱に印字されている使用期限は「未開封の状態で適切な環境に保管された場合」の品質保証期間だが、病院から処方される薬の袋(薬袋)に記載されている日付は、あくまで「用法・用量を守ってその期間内に飲み終えること」を前提とした処方期間に過ぎない。
PTPシート(アルミとプラスチックで1錠ずつ包装されたシート)の端に刻印されている日付は、製薬会社が製造してからおよそ3〜5年の有効期限を示している。しかし、これは純粋に未開封の原形を保ち、温度や湿度が管理された条件下での話だ。一度調剤薬局の棚から患者の手に渡れば、直射日光、湿気、室温の変化に絶え間なく晒されることになる。
劣化した処方薬の期限切れを飲んだ場合のリスクは、単に「効き目が弱くなる」だけでは済まない。有効成分が化学変化を起こして毒性物質へと変質したり、添加剤が酸化して重い胃腸障害やアレルギー反応を誘発することがある。さらに恐ろしいのは、「以前と同じような症状だから」と自己判断で服用した結果、まったく別の疾患の初期症状を覆い隠し、手遅れの重症化を招くという医療上の二次被害である。