急性心膜炎の心電図において、発症初期(数時間から数日以内)に最も高頻度で出現するのが広範なST上昇とPR部低下です。心膜そのものは電気的に不活性な組織ですが、炎症が直下の心外膜下心筋に波及することで、局所的な障害電流が発生し波形異常をもたらします。
心膜炎におけるST上昇の大きな特徴は、波形が「上向きに凹(concave型)」を描いてなだらかに上昇する点です。解剖学的な冠動脈の灌流領域に一致する虚血と異なり、炎症が心膜全体に広がるため、I、II、III、aVFおよびV2〜V6といったほぼすべての誘導で同時にST上昇が確認されます。
さらに見落としてはならないのが、心房筋への炎症波及を示す「PR部の偏位」です。多くの誘導でPR部が基線(TPセグメント)より低下する一方、aVR誘導では鏡面像として「PR部上昇およびST低下」が明瞭に記録されます。このaVR誘導の所見は、心膜炎の極めて感度が高い初期サインとして知られています。