インターネット上のQ&AサイトやSNSでは、「未熟な硬いメロンを収穫してしまったが、常温で追熟させれば甘くなりますか?」という質問が毎年繰り返されています。しかし、果実生物学の事実として、メロンは収穫後に糖度が増えることは絶対にありません。
バナナやキウイフルーツのように、果肉内に大量のデンプンを蓄えており、収穫後にそれが糖へ分解される「クリマクテリック型果実」とは異なり、メロンは樹上にある間にデンプンがほぼすべてショ糖やブドウ糖に変換されます。一度ツルから切り離されたプリンスメロンは、自らの糖分を呼吸によって消費するため、糖度(Brix値)の数値自体はむしろ横ばいか微減傾向を辿ります。
では、なぜ「追熟」という言葉が存在するのでしょうか。収穫後の追熟が果たす役割は、糖度の上昇ではなく「ペクチンの分解による果肉の軟化」と「揮発性アロマ成分の生成」です。細胞壁が柔らかくなることで果汁が溢れ出し、舌の上で甘味を強く感じるようになり、特有のフルーティーな香気が鼻腔へ抜けるため、「甘くなった」と人間の脳が錯覚するのです。早採りした未熟果をいくら放置しても、ただ果肉が水っぽく腐敗していくだけで、甘美なメロンには決して化けません。
収穫適期に採ったプリンスメロンを最高品質で味わうための保存・追熟フローは以下の通りです。
- 収穫直後〜2日間(常温追熟):直射日光の当たらない風通しの良い室内(20〜25℃)に置く。絶対に最初から冷蔵庫に入れてはならない。低温環境(10℃以下)に置くと低温障害を起こし、細胞が壊死して芳香の生成が永久に止まってしまう。
- 食べ頃の見極め:メロンのお尻(花落ち部)を親指の腹で軽く押してみて、かすかな弾力(耳たぶほどの柔らかさ)を感じ、部屋全体にプリンスメロン特有の芳醇な甘い香りが満ちてきたら追熟完了。
- 食べる2〜3時間前(冷却):食べる直前に冷蔵庫(野菜室または冷蔵室)に入れ、食べる適温である8〜10℃前後に冷やす。冷やしすぎると人間の舌は甘味を感じにくくなるため、冷やしすぎは禁物である。