舌がんは原因が特定できない疾患ではなく、生活習慣と明確な因果関係が証明されているがんの一つです。発症の最大要因は、何と言っても「タバコとアルコールの相乗効果」にあります。
喫煙によって生じるタールやニトロソアミンなどの発がん物質が直接口腔粘膜を刺激することは知られていますが、ここにアルコールが加わると発がんリスクは爆発的に跳ね上がります。アルコールが分解される過程で生じるアセトアルデヒドには強い発がん性があり、さらにアルコール自体が有機溶媒として粘膜の防御壁を溶かし、タバコの発がん物質を組織深部へ浸透させやすくするためです。喫煙と過度な飲酒を併用する人の口腔がん発症リスクは、非喫煙・非飲酒者の数十倍に達するという疫学データも存在します。
しかし、タバコも酒も嗜まない若い世代や女性が舌がんを発症するケースも決して稀ではありません。そこに関与しているのが「慢性的・物理的な機械的刺激」です。
- 虫歯を放置して尖った歯が常に舌の同じ側面に当たっている
- 合わなくなった入れ歯(義歯)の金具が舌の縁を擦り続けている
- 歯並びの乱れにより、食事や会話のたびに無意識に舌の同じ場所を噛んでしまう
長期間にわたり粘膜が物理的に傷つけられ、細胞の修復と破壊が繰り返される中でDNAの複製エラーが生じ、前がん病変から悪性腫瘍へと変異していくのです。口腔内の衛生環境を整え、歯の突起を削る・義歯を調整するといった歯科的アプローチは、最も手軽で強力な舌がん予防策となります。