ネット上の情報やSNS動画では、「耳が痛くなったら鼻を強くつまんで思い切りフンッと息を吹き込めば一発で抜ける」といった乱暴なアドバイスが散見されます。しかし、耳鼻科医療の現場から警鐘が鳴らされている重大な落とし穴が存在します。
すでに炎症を起こして閉塞している耳管に対して、力任せに高圧の空気を送り込むと、耳管粘膜をさらに損傷させて腫れを悪化させるだけでなく、中耳の内圧が急上昇して薄い鼓膜が微小断裂を起こす危険があります。さらに恐ろしいのは、内耳の蝸牛窓(かぎゅうそう)や前庭窓が圧力で破れる「外リンパ瘻」です。激しい回転性めまい、吐き気、重度の難聴を引き起こし、最悪の場合は緊急手術を要する後遺症を残しかねません。
また、「痛くなってから点鼻薬を使う」というのも致命的な誤解です。点鼻薬(血管収縮剤)を鼻にスプレーしてから薬効が浸透し、鼻粘膜の浮腫が引いて耳管が開通するまでには最低でも10〜15分を要します。痛みがピークに達した状態で吹き込んでも、着陸までに粘膜の開放が間に合いません。点鼻薬を使うなら「降下開始の20〜30分前」に座席で使用を済ませておくのが、医学的に見て唯一の正解です。