インターネット上のコミュニティやSNS、知恵袋などを定点観測すると、「ジビエをもらったが臭くて家族全員が一口で箸を止めた」「熱湯で下茹でしたらゴムのように硬くなり、獣臭が部屋中に充満した」といった悲痛な失敗談が数多く投稿されています。
現場の実態を知るジビエ専門レストランのオーナーシェフは、こうした失敗の背景について次のように証言しています。
「熱湯でいきなり下茹でする行為は、最も避けるべき初歩的なミスです。肉の外側が一気に熱変性して毛細血管が収縮し、内部に閉じ込められた古い血液や臭み成分の出口が塞がれてしまいます。しかも沸騰によって獣臭成分が水蒸気とともに空気中に飛散するため、調理場全体に不快な臭いが立ち込める結果になります」
現場目線で見えてくるもうひとつの決定的なギャップは、「流通ルートによる品質格差」です。現在、農林水産省が推進する「国産ジビエ認証制度」を取得した食肉処理施設から出荷される認定肉は、徹底した衛生管理のもと、捕獲から解体・冷却までの時間が厳格に制限されています。こうした施設から届く肉は、過度な下処理を必要としないほどクリーンで香り高い品質を誇ります。
対照的に、一般の狩猟者が趣味の範囲で自家解体し、冷却設備のない環境で時間をかけて捌かれた個体は、筋肉内部にドリップが滞留し、雑菌が増殖しているリスクが否定できません。ネット上で見られる「ジビエは絶品」という称賛と「絶対に食べられない悪臭」という酷評の極端な二極化は、個体の処理工程における衛生環境の格差が直接反映された結果であるといえます。