通夜や告別式の現場を取材すると、知らず知らずのうちに「やってはいけない持ち方」をして悪目立ちしている参列者が後を絶ちません。数珠はお経の回数を数える道具から発展した神聖な仏具であり、持参時の所作そのものが参列者の姿勢を無言のうちに物語ります。
式場内で最も多く見られるNG行為が、「数珠を右手で無造作にぶら下げて歩く」あるいは「右手の親指に引っ掛けてブラブラ揺らしながら移動する」という所作です。仏教において右手は「仏の手」「清浄な世界」を表す一方、数珠を保持して自身を護る役割は左手が担います。持ち歩く際は必ず「左手で持ち、房を自然に真下へ垂らす」のが揺るぎない基本原則です。
さらに見落としがちなNG例として、以下の行動が挙げられます。
- 椅子の座面や畳の上に直置きする:中座する際や記帳時に、数珠を椅子の上や畳へそのまま置くのは法具を雑に扱う行為とみなされます。手放す際はバッグの中か、袱紗(ふくさ)の上に静かに置くのが正式な作法です。
- ポケットへ無造作にねじ込む:男性に多く見られますが、スーツのスラックスや上着のポケットに裸のまま押し込むのは、数珠の房を痛めるだけでなく敬意を欠く振る舞いとなります。
- 数珠の貸し借りを行う:「忘れたから貸してほしい」と家族や友人間で数珠を使い回す光景が見られますが、仏教において数珠は「持ち主の身代わり・分身・お守り」です。貸し借りは厳禁であり、忘れた場合は「数珠なしで心を込めて合掌する」方が礼儀にかなっています。