あいみょんの官能表現の最高傑作としてファンからも評論家からも真っ先に挙げられるのが、2018年にリリースされた4枚目のシングル『満月の夜なら』です。官能小説のように生々しいワードを直接使わず、極めて日常的なモチーフの組み合わせによって男女の一夜を詩情豊かに描き切っています。
楽曲の冒頭から登場する「溶かして」「スプーン」あるいは「アイスクリーム」といったフレーズは、リスナーの間でも明らかなメタファーとして考察されてきました。のちに本人がカルチャー誌のインタビューや特番で語ったところによると、この曲は「大人の恋愛関係における濃密な肌の触れ合い」を肯定的に描いたものであり、決して卑猥なものとして隠すのではなく、美しい愛情の交歓としてポップスに昇華させたいという意図が込められていました。
満月という引力が狂う夜のシチュエーションを舞台に、男女の体温や息遣い、シーツの擦れる音まで想像させるディテール。それでいて後味は極めて爽やかで、みずみずしいポップミュージックとして成立しています。タブー視されがちなテーマを軽やかに解き放ち、誰しもが抱える情動を美しく肯定する筆力こそが、ソングライター・あいみょんの真骨頂です。