牛肉の格付けにおいて頂点に君臨するシャトーブリアンとは、背骨の内側に位置する棒状の筋肉「ヒレ(フィレ)」の中心部分だけを指す呼称です。牛の全身部位の中でも牛ヒレ肉の最高部位として格別の扱いを受けています。
解剖学的な観点から見ると、シャトーブリアンの部位は大腰筋(だいようきん)と呼ばれる筋肉に該当します。牛が歩行したり重い体重を支えたりする際にほとんど使われない部位であるため、筋繊維が極めて細かく、結合組織(腱やスジ)がほとんど発達しません。そのため、歯を必要としないと形容されるほどの圧倒的な柔らかさが生まれます。
一般的な成牛(生体重量約600〜700kg、枝肉重量約400〜450kg)から得られるヒレ肉全体は左右合わせて約8〜12kg(全肉量の約2〜3%)に過ぎません。そのヒレ肉の中から、太さが均等で肉質が最高潮に達している中心部のみを切り出したものがシャトーブリアンです。牛1頭から取れる割合はわずか600g〜1kg程度(全体の約0.1%〜0.2%)しかなく、ステーキにしてわずか4〜5枚分という奇跡的な少なさになります。
なお、肉の名称に関して「テンダーロインとの違いは何ですか?」という質問が現場でも頻繁に寄せられます。結論から言えば、ヒレ(フランス語由来のフィレ:filet)とテンダーロイン(英語:tenderloin)は全く同じ部位を指す言語の違いです。アメリカ産や豪州産の輸入牛ではテンダーロイン、国内流通やフレンチではヒレやフィレと表記される傾向にありますが、シャトーブリアンはそのテンダーロイン(ヒレ)の最中心部を特別に選り分けた「最高純度の芯」を指します。