育児現場やSNS上では、連日親たちの悲痛な告白が投稿されています。「寒くて風邪を引かせてはかわいそうと、肌着に裏起毛ロンパースを着せ、フリーススリーパーを着せて毛布を掛けたら深夜に38.8℃まで跳ね上がった」「慌てて救急外来に駆け込んだら、医師から『お母さん、ちょっと着せすぎですね』と服を脱がされ、30分後には平熱に戻って赤面した」といったエピソードです。
こうした事態の背景には、日本社会に根強く残る「子どもを冷やしてはならない」という伝統的な養育規範と、現代の住宅環境との深刻なミスマッチが存在します。
かつての日本家屋は木造で隙間風が多く、冬場は室温が著しく低下するため、何重にも着せ込む知恵が機能していました。しかし、現代の高気密・高断熱住宅において昭和・平成初期と同じ感覚で「厚着+暖房+厚手の寝具」を重ねれば、室内は容易に熱帯状態と化します。まさに「こもり熱の原因」の筆頭は親の善意による着せすぎなのです。
さらに家族心理学的な観点から見れば、核家族化が進み「絶対に熱を出させてはならない」という育児不安に追い詰められた親ほど、過剰防衛として子どもを暖めすぎる傾向が指摘されています。子どもを病気から守りたいという愛情が、皮肉にも熱の逃げ場を奪うリスクを生み出している現状を認識しなければなりません。