かつて原因不明とされていた本疾患は、2000年代以降の分子生物学の進展によって解明が進みました。主な原因は、細胞分裂時に染色体を束ね、転写調節に携わるタンパク質群「コヒーシン複合体」関連遺伝子の変異によるものです。
全体の約60〜70%を占めるのがNIPBL遺伝子の変異です。そのほかにSMC1A、SMC3、RAD21、HDAC8といった関連遺伝子の異常が特定されています。これらの変異により、胎児期の極めて初期段階における特定の遺伝子発現パターンが撹乱され、多系統に及ぶ形態異常や発達遅滞が生じる機序が解明されています。
遺伝性について不安を抱く声も散見されますが、臨床上確認される症例のほぼ100%は突然変異(de novo変異)による孤発例です。両親から遺伝的に受け継がれるケースは極めて稀であり、親の生活習慣や妊娠時の行動に原因があるわけではありません。次子への再発率も一般的な集団とほぼ同等の低さ(約1%未満)に留まります。