初日の出観賞において、もっとも初歩的でありながら致命傷になりやすいのが「方角」に関する思い込みです。小学校の理科で「太陽は東から昇る」と習った記憶から、方位磁針やスマートフォンのコンパスで真東(方位角90度)を向いて待機してしまう人が後を絶ちません。
冬至直後である元旦の初日の出方角は、真東ではなく大きく南寄りの「東南東(方位角約118度〜120度)」です。この約30度のズレは、現地において決定的な差を生み出します。例えば、東側に遮るもののない海岸であっても、南東側に岬や防波堤、あるいは高層ホテルが突き出している地形の場合、太陽はその障害物の背後から昇ることになり、海抜ゼロメートルからの美しい日の出を拝むことはできません。
ネット上の口コミで「行ってみたらビルに遮られて見えなかった」「思っていた方向と違う山陰から昇ってきた」という落胆の声が散見される背景には、この方位角の確認不足があります。現地に到着したら、まず南東寄りの120度方向の水平線・稜線に視界を遮る障害物がないかを必ず確認してください。
また、「標高が高い場所ほど日の出が早い」という物理法則の誤解も存在します。富士山頂(標高3,776m)での日の出は午前6時42分頃と極めて早いですが、これは富士山頂自身から見た場合です。山麓の湖畔から富士山越しに太陽を見る場合は、前述の通り「山を乗り越えて光が届く時間」が必要となるため、実際には通常よりも大幅に遅くなります。自分が「山の上に立つ側」なのか「山を見上げる側」なのかによって、タイムスケジュールは正反対の設計が求められます。