館内へ足を踏み入れた鑑賞者を惹きつけてやまないのが、2階に広がる常設展示室です。日本の近代美術史を語る上で欠かすことのできない3人の巨匠たちの足跡が、これほど体系的かつ濃密に鑑賞できる場所は他にありません。
まず圧倒されるのが、日本のフォーヴィスム(野獣派)およびキュビスムの先駆者である萬鉄五郎の常設展エリアです。独自の色彩感覚と力強い筆致で大正期の洋画界に衝撃を与えた萬の油彩や水墨画、素描が並び、自己の内面と格闘し続けた画家の生々しい息遣いが伝わります。自著や当時の書簡で語られた「自己の真実を掴むための格闘」を視覚化したかのような画面構成は、観る者の視界を強く揺さぶります。
続いて視線を奪うのが、哀愁と静けさを湛えた松本竣介コレクションです。戦時下の重苦しい世相にあっても人間精神の気高さを描き続けた竣介の『立てる像』や、都会の街並みを繊細な線描で紡ぎ出した都市風景画は、透明感あふれる光と影のレイヤーをまとっています。当時の雑誌に寄せた「生きてゐる人間を、そのまゝの形で捉へたい」という竣介の言葉どおり、静謐でありながら強烈な倫理的抵抗を感じさせる絵肌は、息をのむほどの緊張感を放っています。
そして彫刻界の巨峰、舟越保武の彫刻作品群が空間に荘厳な祈りの空気を吹き込みます。『原の城』や『ダミアン神父』をはじめとするブロンズや大理石の彫像は、長崎の殉教者や過酷な運命に耐える人間の崇高な尊厳を宿しています。制作現場で作家が見せた精神の張り詰めを想起させるシャープな輪郭線と慈愛に満ちた表情は、展示室の柔らかなライティングと共鳴し、観る者の内省を深く促します。