本作のクライマックスにおいて、多くの読者・視聴者が涙腺を決壊させるのが、主人公・朝倉晴人が開いた写真展のシーンと、それに続く有明美咲の最期です。美容師として輝いていた美咲は、発症からわずか1年足らずで老婆のような容姿へと変貌し、愛する晴人の前から姿を消しました。彼女が選んだのは、「若く美しかった自分の記憶のまま、彼の中で生き続けたい」という切実な願いでした。
しかし、物語の終盤、美咲は帽子と深く被ったフード、マスクで老いた全身を覆い隠し、晴人の個展へと密かに足を運びます。そこで彼女が目にしたのは、自身が駆け抜けた輝かしい日々――晴人のカメラレンズ越しに捉えられた、眩いばかりの笑顔の写真たちでした。晴人は美咲が去った後も彼女を忘れることなく、彼女への愛と感謝を一枚一枚のフィルムに焼き付けていたのです。
個展会場で晴人は、すれ違った小柄な老婆が落とした落とし物を拾い、言葉を交わします。その瞬間に確信こそ得られなかったものの、魂のレベルで美咲の気配を察知していました。美咲は自身の変わり果てた姿に絶望するのではなく、「自分は確かに愛されていた」という絶対的な幸福感に包まれながら静かに息を引き取ります。
報道機関のインタビューで主演の中島健人氏が「晴人が美咲を撮る行為は、彼女の命そのものを肯定することだった」と語った通り、ラストシーンは単なる悲恋の結末ではありません。美咲が遺した手紙とカメラのフィルムを通じて、晴人が深い喪失から再び前を向き、桜が咲き誇る春の街へと歩み出す「再生の儀式」こそが、本作が名作と呼ばれる所以です。