インターネット上の言説やライト層の間で長年信じられてきた最大の誤解が、「モーニング娘。は黄金期以降、低迷して終わったコンテンツである」という言説です。しかし、興行実態や音楽的潮流を丹念に検証すると、この俗説が極めて一面的な見方に過ぎないことが分かります。
第1に、高橋愛を中心とする「プラチナ期」において、シングル売上の数値自体は全盛期を下回っていたものの、全国ツアーの動員力および年間公演数は高水準を維持していました。テレビ出演に依存せず、ライブ現場のチケットを高稼働率で売り切る「興行型ビジネスモデル」への転換は、CD不況が深刻化する音楽業界においてむしろ先駆的な成功例でした。
第2に、つんく♂のプロデュース方針とメンバーたちの研鑽によって生まれた「フォーメーションダンス」は、2010年代以降の日本のアイドルシーン全体(坂道グループやAKB48グループのダンス難度向上、K-POPカルチャーの浸透)に甚大な影響を与えました。「見せるダンス」から「幾何学的に構成された群舞」へのシフトは、日本の女性グループの表現力を1段階押し上げる契機となったのです。
大衆的なテレビタレント期から、現場主導のスペシャリスト集団へ。表面的なメディア露出の多寡だけでグループの価値を測ることは、彼女たちが成し遂げた構造的イノベーションを見誤ることになります。