契約上の問題以上に深刻なのが、設備を物理的に破壊しかねない電気工学上のリスクです。三相交流は、3つの相に均等に電流が流れる「三相对称平衡」を前提として給電ネットワークが設計されています。
ここに単相負荷を無秩序に直結すると、R相とS相にだけ過大な電流が流れ、T相には電流が流れないという相不平衡(アンバランス)が発生します。相不平衡が起きると、配線抵抗や変圧器内部のインピーダンスによって極端な相不平衡電圧降下が生じ、各相の電圧バランスが崩壊します。
この不平衡状態が招く具体的な被害は以下の通りです。
- 変圧器(トランス)の異常過熱:偏った相に集中して電流が流れるため、受電トランスの局部過熱が進行し、内部絶縁油の劣化やコイルの焼損を招きます。
- 他の三相機器(モーター等)の出力低下と焼損:不平衡電圧下で三相誘導電動機を運転すると、回転磁界が乱れて「逆相分電流」が発生します。これによりモーターのトルクが低下するだけでなく、激しい異常振動や発熱を引き起こし、モーターの寿命を著しく縮めます。
- 漏電遮断器の誤作動:相ごとの電流アンバランスが極端になると、保護協調が崩れ、メインブレーカーの不要動作(トリップ)が頻発して操業停止を招く原因となります。
現場の安全基準を無視した2線取り出しは、自社の電気機器を壊すだけに留まらず、同一の配電線柱に接続された近隣施設へ電圧異常を波及させる事故要因となるのです。